【来週の注目材料】テーパリング開始に向け注目度高まる~米雇用統計

―本記事は情報拡散を目的に作成しています。ご紹介している文書は、各情報サイトおよび各企業様のホームページ等から引用させていただいています―


 2日金曜日に6月の米雇用統計が発表されます。4月分の雇用統計、非農業部門雇用者数(NFP)がサプライズな弱さとなり、市場を驚かせました。一気の改善が期待された前回5月分のNFPも、4月よりかなりましな数字になったとはいえ、予想を大きく下回る結果となりました。4月は失業率も改善予想に反して悪化。5月は予想以上の低下を示しましたが、労働参加率が低下したことが背景にあるとみられ、強い数字とは捉えられませんでした。


このように2回続けて期待を裏切る形となった米雇用統計ですが、米景気の回復期待自体は継続しており、物価の上昇傾向も著しい中、雇用の回復に勢いが出るとテーパリングの開始につながると期待されており、今回発表される6月分の数字に注目が集まっています。


 まずは前回6月分の状況から確認してみましょう。前回のNFPは前月比67.5万人増の予想に対して55.9万人増に留まりました。100万人増予想に対して26.6万人増に留まり、事前予想からの弱い方向への乖離幅としては歴史に残る結果となった5月分に比べるとインパクトは小さいですが、それでも事前予想から11万人強の乖離はかなり弱いという印象です。


 新型コロナワクチン接種の進展で雇用の回復が期待されたレジャー&ホスピタリティ部門(カジノ・劇場などのアミューズメント部門、ホテルなどのアコモデーション部門、レストラン・バーなどの飲食部門からなる接客を中心とするグループ)は、29.2万人増と4月の32.8万人増に続いて強めの数字となりました。もっともパンデミック前の昨年2月時に1691.5万人が働いていた同部門は、5月時点で1437.7万人の就労者数にとどまっており、ピーク時より依然250万人以上少ない状況です。レストランなどの再開を受けて、求人自体はかなり増えているようですが、新型コロナの感染リスクが警戒され、思うように人が集まっていないようです。


 そうした状況が同じく出ているのが小売部門で、こちらは前月比0.58万人減と、4月の3.02万人減ほどではないにせよ、2か月連続での雇用減となりました。こちらも店舗の再開などが進んでいますが、人が戻りきらずピーク時から40万人以上就労者が少ない状況です。


 一方で明るい部門も見られました。介護などのヘルスケア部門の雇用増で、いつも雇用全体を支えている教育及びヘルスケア部門は8.7万人の増加。ヘルスケア部門が4.58万人増といつも通りの好調さを示したことに加え、教育部門が前月比4.07万人増となって全体を支えました。学校などの再開が進んでいる状況が反映されているとみられます。


 こうした状況を受けて今回の見通しです。非農業部門雇用者数の事前予想は前月比69.5万人増と、前回から伸びが強まる見込みです。米国の雇用者数はパンデミック前と比べて依然762.9万人も少ないことを考えると、この程度の伸びは十分に期待できます。


 今回の雇用統計の計算には間に合っていませんが、NY州でのロックダウンが24日に解除されるなど、米国各地で行動制限の緩和は今も進んでいます。ワクチン接種の進展もあって接客関連の求人への応募も戻りつつあります。また、失業者への特別給付措置なども徐々に終了しており、比較的賃金が低い部門でも雇用の回復が見込まれています。こうした状況から、予想を超えるような雇用増も十分期待できるところです。


 6月のFOMCで示されたFOMC参加メンバーによる年末時点での政策金利見通し(ドットプロット)において、2023年末時点での2回の利上げが示唆されました。また、18名のメンバー中7名という決して少なくないメンバーが2022年中の利上げ開始見通しを示しました。利上げがスタートする前には、量的緩和策である資産購入プログラムについて十分な縮小を行うことをFRBは示していますので、テーパリングの開始時期の見通しも前倒しされている状況です。


 前回、量的緩和策と実質ゼロ金利からの金利上昇という金融政策の正常化が行われた際には、2015年12月の利上げ開始を前に、2014年1月からテーパリングが開始され、2014円10月に終了しました(満期債券の再投資は維持されました)。


 前回の例を踏まえると2022年中の利上げのためには、もうテーパリングが始まっていてもいいぐらいの状況。今のところの予想の中央値である2023年中の利上げ開始でも、テーパリングについては年内のスタートが十分にありそうで、市場は8月末のジャクソンホール会議でのテーパリング開始の示唆と、9月のFOMCでの開始の正式公表、11月のスタートというスケジュールを本線としてみているようです。


 ただ、パウエル議長をはじめFRBの首脳部はハト派(金融引き締めに慎重派)がそろっています。市場の期待するスケジュールで引き締めが進むためには雇用の回復がほぼ絶対的な条件となります。


 予想程度もしくはそれ以上の雇用統計の強さが示されるかどうか。結果次第ではかなり長期にわたるドル相場の行方に影響することになりますので、注目してみていきたいところです。