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米物価高が利上げ期待の前倒し誘う

―本記事は情報拡散を目的に作成しています。ご紹介している文書は、各情報サイトおよび各企業様のホームページ等から引用させていただいています―


 先週末の米雇用統計(9月)で非農業部門雇用者数は、予想をはるかに下回る低い伸びとなりました。2か月続けて事前予想値から大きく下方向に乖離する格好に。弱いといわれた8月分の数字(速報時点で23.5万人増、36.6万人増に上方修正)をも下回る19.4万人増という結果に、市場はいったんドル売りで反応するなど、大きなサプライズとなりました。


 しかし、その後値を戻してドル買いが強まるなど、ドルの動きはしっかりに。雇用統計前のロンドン市場で1.60%の大台を付けていた米10年債利回りが、雇用統計後に一時1.55%台まで利回りの低下を見せたものの、その後1.60%を超えて1.615%前後を付けるなど、利回りの上昇を示したことがドル買いを誘いました。


 こうした米長期債利回りの上昇傾向は、米国の早期利上げ期待を反映したものと見られます。9月のFOMCでの参加メンバーによる政策金利見通し(ドットプロット)では、2022年中の政策金利について、18名中9名と半分のメンバーが少なくとも1回の利上げを見込むという見通しを示しました。この後、この9名に含まれていると見られるダラス連銀総裁とボストン連銀総裁が急遽退任するなどの事態もありましたが、市場はタカ派の代表格2名が去るという非常事態をこなして、前向き予想を強め、金利市場動向から見た来年中の利上げ見通しは100%となっています。通貨先物市場動向からみた利上げ確率も、来年中の利上げを8割と見込んでいます。また、最も多い見通しは来年中に1回の利上げですが、約4割の確率で2回以上の利上げが見込まれているなど、かなり前向きな動きが広がっていることが分かります。


 債券利回り上昇の背景にあるのが、米国の物価上昇。今月初めに発表された8月の米PCE(個人消費支出)デフレータは前年比+4.3%、同コアデフレータは前年比+3.6%となっており、インフレターゲットの2%をはるかに超える水準に。PCEデフレータは3月分からターゲットの2%を超え、コアデフレータも4月分から2%を超えての推移となっています。米FRBは直近のインフレについて一時的なものであるという認識を崩していませんが、地区連銀総裁を中心に警戒感を示す動きが強まっています。エネルギー価格の上昇やサプライチェーン問題を受けた供給制限によって、物価上昇がさらに加速する可能性もあり、今後の状況が気になるところ。


 米FRBの2大命題である雇用の最大化と物価のターゲット付近での安定のうち、雇用についてはここ2回続けてやや残念な伸びになっており、物価が安定するようだと緩和姿勢の維持のハードルが下がりますが、直近の物価高が続くようだとFRBに引き締めを求める動きが強まりそう。


 こうした中、13日に9月の米消費者物価指数(CPI)が発表されます。米国のインフレターゲットの対象は上述のPCEデフレータですが、計測が煩雑ということもあり発表がかなり遅くなっており、同系統の指標で変化の傾向も似通る消費者物価指数に市場の注目が集まることが多いです。


 事前予想は前年比+5.3%、エネルギーと生鮮食品を除くコアは前年比+4.0%となっています。ともに8月と同水準という予想です。コアに関しては6月の4.5%から比べると若干下がっていますが、ターゲットの2倍の水準と、水準的にはかなり高いところでの推移です。CPI全体ではエネルギー価格の上昇もあり、6月、7月に付けた5.4%とほぼ変わらない水準での推移が見込まれています。


 8日のNY市場でNY原油先物(WTI)が2014年11月以来の80ドル台を付けるなど、エネルギー価格の上昇が目立っています。半導体をはじめとするサプライチェーン問題についても、先月のECBフォーラムで、FRBのみならず、日銀、ECB、英中銀といった主要国中銀総裁が口々に警戒感を示すなど、状況は依然深刻。


 物価の上昇圧力が継続するとの警戒感が広がる中、予想前後の数字は織り込みが進んでいるとみられますが、予想を超えての上昇はドル買いにつながりそうです。



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